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※2022年5月更新版※          コロナに学ぶ、納税資金対策

2020.11.10

お世話になります。税理士の山方です。
今回は、相続税の納税資金対策についてお話します。

1. 納税資金対策の必要性
相続はいつ発生するかわかりません。
発生してから10カ月以内に、場合によっては数千万円単位の納税資金を確保するのは非常に困難です。
そのため事前に納税資金の確保、もしくは調達方法を検討しておく事が非常に重要です。

2.「不動産結構持っているけど、預金はそんなにないかなぁ」←要注意です!
不動産オーナーの中には、所有する不動産のうち一つを「相続税納税資金用」という意識で保有している方がいらっしゃいます。
相続が発生したらその不動産を売却して、売却代金を相続税に充当してもらうという算段です。
この考え自体は、あながち間違えではありません。
地価がそれなりに安定している状況下では、資金調達のため有効な手段の一つと言えます。

しかし、今回のコロナのような不測の事態が発生した場合、非常にリスクが高いです。

令和2年5月の全国の土地取引件数は、前年同月比で約80%まで下落しています。
(令和2年5月:93,293件、令和元年5月:117,066件)
ただし、その後は回復傾向のようです。
(令和元年年間:1,543,388件、令和2年年間:1,486,427件、令和3年年間:1,558,770件)
令和2年5月を境に取引件数自体はコロナ前の水準に回復しています。

地価に関しては、それまでは都市部を中心にではありますが地価上昇を続けていましたが、令和2年を境に横這いもしくはやや下落に転じたように見受けられます。
地価変動に関しては一概にコロナの影響とは言えませんが、世界情勢等を鑑みるにいつ不測の事態が発生してもおかしくない状況です。
いずれにせよ令和2年5月に資金調達のために土地売買を予定した人は、かなり肝を冷やしたと思います。

不動産を換金目的で持つリスクは、「必ずしも売却したいときに売却したい価格で売却できるとは限らない」点です。
不測の事態が起こったときはなおさらです。
コロナにより、その点が際立ってきた印象を受けます。
今後の納税資金対策としては、その点も踏まえて計画を立てる必要があると言えます。

3. 納税資金対策(相続発生前)
納税資金対策の基本は、まずは事前に相続税がいくら発生するかを知ることから始まります。
これは、自分で計算するのは大変なので税理士等に依頼する形になると思います。

①納税資金が確保できているケースの対策

◆生命保険への加入
納税資金が相続時に確実に現金化されます。
また、生命保険金の非課税枠により相続税の節税対策にも使えます。

◆納税資金相当額を相続人に生前贈与
生前に納税資金相当額を相続人に贈与しておく方法です。
110万円の贈与税非課税枠を使えば、節税対策にもなります。
ただし、相続人が勝手に使ってしまわないよう事前確認が重要です。

②納税資金が不足しているケースの対策
◆手持ち不動産の売却を検討
手持ち不動産を売却して資金を作る、一番シンプルな方法です。

しかし、不動産価格は情勢により変動するので、売却のタイミングは本人次第です。
また不動産を売却しようとしても、本人が認知症の場合などは、事実上相続発生後でないと、不動産の売却は不可能になります。
しかし、事前に相続人と「家族信託契約」を結んでおけば、相続人の判断で生前の売却が可能となります。

◆手持ち不動産の有効活用を検討
手持ち不動産の収益性を上げて、手持ち資金を増やす方法です。
既存の駐車場に賃貸アパートを建てるなどの方法です。
この方法は、財産評価額の引き下げにもつながるため節税対策にもなります。

4. 納税資金不足で相続が発生した場合
本来は一番避けたいケースですが起こりうる話でもあります。
この場合の対策は次の通りです。

◆10カ月以内に手持ち不動産を売却して資金を作る。 
もはや対策ではありません。その時の状況次第です。買い手に足元を見られるかも…

◆延納制度を利用する。
延納とは、相続税の分割払いの事です。本当に一時納付が困難な場合に限り、一定要件を満たせば、申告期限までに延納の届け出をすることで認められる納税方法です。返済期限や利息に相当する利子税の利率は財産内容により決まります。

延納期間中に不動産の売却などで納税資金の調達ができ次第、一時納付も可能です。
不動産の売却が決まるまでのつなぎとして有効です。

◆銀行から納税資金を借り入れる
銀行側次第にはなりますが、納税資金として貸し付けてくれる場合もあります。延納の利子税(利息)よりも銀行利息の方が利率の低い場合は、利用する価値ありです。

【参考リンク】
・都道府県地価調査(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000044.html

・土地取引規制基礎調査概況調査結果(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000029.html

 

筆者紹介

山方越志税理士事務所 
山方越志

初めまして。税理士の山方と申します。
私は、これまで相続税の申告に50件近く携わらせ頂いてます。 相続対策も含めますと少なくとも100件以上にはなるかと思います。これは、税理士としても相当な案件数と自負しているところです。
相続実務においては、相続税の知識はもちろんの事、周辺税法・民法・社会保険料及び不動産といった様々な知識からの多角的な検討が必要となります。
その中でも、とりわけ重要なのはご家族皆さんのお気持ちの部分だと、仕事のたびいつも痛感させられます。

節税のアドバイスは当然のこととして、何よりも「その人の大切な物が大切な人に引き継がれていくことのお手伝い」をモットーに業務に携わらせて頂いております。

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