不動産ポータルサイトのSUUMOやテレビCM等でおなじみの株式会社リクルート住まいカンパニーが提唱した「デュアラー」――。新たな生活スタイルとしてこの「デュアラー」という言葉が今注目を集めています。
デュアラーとは、都心と郊外での2つの生活、すなわちデュアルライフを楽しむ人たちのことを指します。
従来、二拠点生活と聞くと富裕層が豪華な別荘などを持つようなイメージですが、近年では幅広い年代の人々が空き家やシェアハウスを活用し、安価で気軽にこの生活スタイルを楽しんでいるようです。実際に私が不動産業に携わっている福岡市においてもデュアルライフを実現するための不動産購入の実例も出始めています。
同社によれば、デュアルライフの人気が高まる背景として、以下の要因を挙げています。
①狭い新築、窮屈な都心ライフからの脱却
福岡都市圏で販売中の新築マンションを見ると、平均専有面積は73.45㎡(22.2坪)で、2015年の83.09㎡(25.13坪)から4年間で9.64㎡(2.9坪)も減少しています。ここに高騰する販売価格を調整すべく専有面積を小さくすることで価格を抑えようとするマンションメーカーの苦心が見て取れます。
これは何も福岡だけにとどまる話ではありません。
確かに新築マンションは設備も綺麗で気持ちの良いものではありますが、高額にも関わらず理想よりも狭い、また都心部に住むという精神的な窮屈さを感じている人も多いのではないでしょうか。
私たち消費者が住宅や住環境に求めるものは子育てや田舎暮らしへのあこがれ、趣味など多種多様になっています。都心生活の中で窮屈さや息苦しさを感じるといった状況を打破するという意味で、このデュアルライフが注目を集めています。
②二拠点目の住宅形態に変化
昔は別荘と言えば購入するという選択肢しかありませんでした。時代の変化とともに今では「不動産の持ち方」にも変化が生じています。単なる購入や賃貸といった従来の形態から、シェアや民泊で貸出すなどの新しい形態が生まれ、こういった変化が、デュアルライフをより身近なものにしています。
さらに将来、サテライトオフィスやテレワークなどの普及で、私たちの働き方や生活スタイルが変われば、職住近接(職場に近い場所に住宅を探す)という考え方そのものに変化を及ぼすかもしれません。デュアルライフも単に週末や休暇を過ごすための場所ではなく、生活を豊かにしようと、例えばひと月の半分を郊外で過ごしてみようといった需要が高まるかもしれません。
ところで、今年3月に総務省から「関係人口の創出に向けて」という報告書が出されました。「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します。
サテライトオフィスやデュアラーの普及による人の流れの変化が関係人口創出のきっかけになると考えています。郊外での滞在時間が増えると、地域経済への貢献や地域コミュニティーの形成など、嬉しい副産物も期待できるでしょう。
もちろん人が集まるにはその地域自体が魅力を高めることが必要です。しかしデュアルライフには趣味満喫型、自然癒やされ型、のびのび子育て型やプレ移住型に至るまでそのスタイルは多種多様です。この多様性が地域の魅力を高める施策のヒントを含んでいるかもしれません。
こういった好循環が最近深刻化している空き家問題の解決の糸口になれば、空き家という負動産が価値ある不動産に変わると思います。そうなれば、不動産に従事する者としては嬉しい限りです。